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本日開館
Tamaki Yoshida 𠮷田多麻希
土を継ぐ—Echoes from the Soil
Ruinart Japan Award 2024 Winner
Presented by Ruinart
セノグラファー:小髙未帆(APLUS DESIGNWORKS)
2024年、写真家・𠮷田多麻希は Ruinart Japan Award を受賞し、フランス・シャンパーニュ地方のシャンパーニュ・メゾン、ルイナールのアーティスト・イン・レジデンスとして滞在した。このプロジェクトは、シャンパーニュの大地に刻まれた記憶を探ることから始まった。
シャンパーニュ地方の土壌は、幾重にも積み重なる石灰岩の地層を抱え、その奥深くに蓄えられた養分と時間が、新たな生命へと受け継がれていく。𠮷田はこの土地の変化と循環に目を向け、土が単なる物質ではなく、過去の記憶を継承する層であることを実感していった。
「写真は過去を固定するものなのか。それとも、時間の中で意味を変え、未来へと響くものなのか」
化石採掘場での経験とも重ねながら、𠮷田は写真もまた、時間の中で埋もれ、やがて誰かの眼差しによって浮かび上がる存在であると考えた。そして、自ら撮影した写真をシャンパーニュの土に埋めるという行為へと展開する。
朽ちた葉、キノコやナメクジ、土と一体化しつつある地面、道端で偶然見つけた死んだ鳥──それらは「土の部屋」に据えられ、足元の床下に広がる地層とともに、見えない時間の層を抱えながら静かに浮かび上がる。
次第に、𠮷田の眼差しは、より大きな人の手が届かない生と死の営みにも向けられていく。森の奥から響く鳴き声を聞きながらも、その姿は見えないままだったが、滞在の終わりが近づく頃、ついに声の主である鹿が目の前に現れた。その生命の躍動感に満ちた姿と、空を舞う鳥の群れ──𠮷田は、それらを自ら漉いた和紙に封じ込め、「再生の部屋」に宿した。そこでは、土の中から立ち上がる時間の流れの中で、生命が巡り続けることを象徴するように配置される。
「土を継ぐ—Echoes from the Soil」 は、写真を記録という概念から解き放ち、時間の中で変化し続けるものとして捉え直す試みである。𠮷田は「見ること」の純度を高め、写真と空間を通じた対話を探求しながら、土に蓄えられた記憶がどのように未来へと響いていくのかを問いかける。
文:後藤由美

©︎ Tamaki Yoshida

©︎ Tamaki Yoshida

©︎ Tamaki Yoshida
Fees 入場料
入場無料
会期中1回、全会場に入場できる特別パスポートチケットもございます。
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artist アーティスト
Tamaki Yoshida 𠮷田多麻希
コマーシャルフォトグラファーとして多くの企業で活躍する傍ら、常々感じていた自然と人との関係の不平等さを見つめ直すべく、2018年よりプロジェクトをスタート。どこか他人事になりがちな大きな問題からではなく、より身近な視点から人と自然や生き物の関係を問いかけるのが𠮷田のスタイルだ。現在は、生活排水による環境問題や、近年頻発している人と野生動物の事故などをテーマにしたプロジェクトに取り組んでいる。これらのプロジェクトにおいて𠮷田は、生き物の悲劇的な側面に焦点を当てるのではなく、人間の思考方法や無意識の行動に固執することに疑問を投げかけ、人と生き物の新たなバランスを模索することを目指している。
Venue 会場
TIME'S
- 開館時間
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11:00–19:00
※入場は閉館の30分前まで
- 休館日
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無休
- 住所
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京都市中京区三条通河原町東入中島町92番
- アクセス
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地下鉄東西線「三条京阪」駅、または京阪本線「三条」駅 徒歩3分