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本日開館
Mao Ishikawa 石川真生
アカバナ
Presented by SIGMA
セノグラファー:おおうち おさむ
※入場は閉館の30分前まで
KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭は、「 HUMANITY(人間性)」をテーマとした2025年のプログラムにおいて、戦後の沖縄を代表する写真家・石川真生の展覧会を開催できることを光栄に思います。
沖縄は琉球の時代から長い歴史の中で薩摩・日本・アメリカそして再び日本に搾取され、太平洋戦争では「捨て石」とされ地上戦で多くの犠牲者を出し、いわゆる「沖縄返還」後も米軍や自衛隊の軍用地のためにその土地や自然が奪われてきました。
米軍統治下の沖縄で生まれた石川はその人生をかけ、一貫して沖縄愛と人間愛をつらぬく眼差しで、米軍基地を含めた沖縄に関するもの、そして沖縄に生きる人々を近距離から撮り続けてきました。
1971年の米軍基地継続と自衛隊配備をかけた沖縄返還協定に反対するデモをきっかけに写真を始めた石川は、2023年の日米共同訓練やミサイル基地建設をきっかけに、再び最新作では病を押して南西諸島の基地をめぐる問題にフォーカスしています。
本展では、石川が大好きなアカバナ(沖縄の原種系ハイビスカス)をタイトルにした、この花のようにたくましくも美しい「沖縄の女」たちと、沖縄人と同じく不当に差別を受けてきた黒人の兵士たちを捉えた最初期の作品「赤花ーアカバナ」を合わせて展示します。
文:KYOTOGRAPHIE 共同創設者/共同ディレクター 仲西 祐介
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本展は、沖縄を活動の拠点としている写真家・石川真生の個展である。
石川は、2021年に沖縄県立博物館・美術館、2023年に東京オペラシティアートギャラリーでそれぞれ大規模な個展を行っている。この展覧会以降、令和5年度(第74回)芸術選奨文部科学大臣賞、第43回土門拳賞、第40回写真の町東川賞国内作家賞、釜山ビエンナーレ2024、 Mead Gallery(ウォーイック大学附属美術センター、イギリス)での個展、第36回サンパウロ・ビエンナーレ(2025)と立て続けに受賞や個展、国際展への出品が続いており、文字通り今世界が注目する写真家である。
〈赤花 アカバナ──沖縄の女〉
石川の作品には、沖縄にかかわるあらゆる人々が登場する。駐留するアメリカ兵であっても、自衛隊であっても、一般の人々であっても、それぞれに等距離の眼差しによって捉えようとする。石川は沖縄に駐留する兵士を責めようとは思わない。国家の枠組みから離れた生身の人間へ注ぐ平等な眼差しが石川の視座にはある。こうした姿勢が生まれるきっかけとなったのは、沖縄の米軍を写真におさめるために、まず米兵の写真を撮るべくコザの米兵相手、正確には黒人専用のバーに勤め始めたことにはじまる。1975年のことだ。その時の成果は、一冊の写真集で、石川の写真家としての事実上のデビュー作『熱き日々 in キャンプハンセン』(1982年)として結実する。『赤花 アカバナー 沖縄の女』(2022年)のもとになったシリーズである。
また、今回は、2014年から始まった大琉球写真絵巻の新作も展示されている。昨年に与那国島と石垣島で撮影された作品は、今まさに島々で何が起きているか? 多くの人々に伝えたい作品である。
文:天野太郎(東京オペラシティアートギャラリー チーフ・キュレーター)
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〈赤花 アカバナ──沖縄の女〉は、石川の最初期の作品群である。ここに写っているのは、彼女と同じ時代を同じ場所で生きた女たちだ。石川はかつてこう語っている。
「私は自分が当事者じゃない写真は撮れない。基地と米兵を撮りたいと思ったとき、私も街の女になるのが手っ取り早いと思ったのさ」
「沖縄は石を投げれば知り合いや親戚に当たるクソ狭い島さ。そこで潔いほど自由に生きてる彼女たちはカッコよかった。私もあんなふうに人目を気にせず生きようと決めたんだ」
石川の写真の前に立つと、「ひと」のリアリティが、熱気をはらんで押し寄せてくる。撮るという行為は、生身の人間が生身の人間と向かい合うことだと一瞬にして理解させ、見る者をもその関係性に巻き込んでいく。
石川が生まれ、現在も暮らすのは、個人の傷がイコール時代の傷であり、普通の人たちの人生が鮮烈かつ残酷なかたちで歴史に刻まれてきた土地だ。近年は、与那国、石垣、宮古など、自衛隊の南西シフトが進む島々を精力的に撮影している。
彼女の作品は、撮影者が傍観者ではいられない沖縄の現実を突きつけ、ドキュメンタリー写真における客観性の意味を問い直す。それでいて圧倒的に自由で、かつ愛にあふれている。
1970年代から彼女が撮り続けてきた沖縄の「いま」は何層にも積み重なり、人間の顔をした現代史として、ここに、私たちの目の前にある。
文:梯 久美子(ノンフィクション作家)

© Mao Ishikawa

© Mao Ishikawa

© Mao Ishikawa
Fees 入場料
大人: ¥1,000
学生: ¥800 (学生証の提示をお願いします。)
会期中1回、全会場に入場できる特別パスポートチケットもございます。
詳しくはこちらをご覧ください。
artist アーティスト
Mao Ishikawa 石川真生
1953年、沖縄県大宜味村生まれ。1970年代から写真をはじめ、1974年、WORKSHOP写真学校東松照明教室で写真を学ぶ。沖縄を拠点に制作活動を続け、沖縄をめぐる人物を中心に、人々に密着した作品を制作している。2011年、『FENCES, OKINAWA』で、さがみはら写真賞を、2019年には日本写真協会賞作家賞を受賞。国内外で広く写真を発表し、沖縄県立博物館・美術館のほか、東京都写真美術館、福岡アジア美術館、横浜美術館、ヒューストン美術館(アメリカ)、メトロポリタン美術館(アメリカ)などパブリックコレクションも多数。
Venue 会場
誉田屋源兵衛 竹院の間
- 開館時間
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10:00–18:00
※入場は閉館の30分前まで
- 休館日
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4月17日・24日、5月1日・8日
- 住所
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京都市中京区室町通三条下ル 西側
- アクセス
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地下鉄烏丸線または東西線「烏丸御池」駅 6番出口から徒歩4分