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Tetsuo Kashiwada 柏田テツヲ

空(くう)をたぐる

Ruinart Japan Award 2023 Winner Presented by Ruinart

セノグラファー:小髙未帆 (APLUS DESIGNWORKS)

大阪で生まれ育った柏田は、高校の3年間を野球留学で宮崎県の山奥で過ごし、部活動で禁止されていたため携帯電話を持たずに暮らしました。多感な時期に情報から遮断された反動もあり、日々接する自然の移ろいや脅威に毎日のように心動かされ、五感が研ぎ澄まされていったと語ります。19 歳で写真による制作活動を始めるようになってからも、自ずと自然は作品づくりのモチーフのひとつとなりました。

柏田は屋久島で滞在制作をした作品で 2023年の KYOTOGRAPHIE インターナショナル・ポートフォリオレビューの参加者から選ばれる「Ruinart Japan Award」を受賞。
2023年秋にフランスのランス地方を訪れ、世界最古のシャンパーニュブランドであるルイナールのメゾンにアーティスト・イン・レジデンスとして2週間滞在します。現地で職人たちと話したり、ブドウ畑やルイナールが再生を試みる森と対峙したりするなかで、1、2 度の気温変化でブドウの糖度が変わりシャンパーニュ作りに大きな影響を与えることを知り、地球の温暖化がいかに自然環境に影響を与えているかを目の当たりにします。一個人である自分に何ができるのかを考えながらブドウ畑を歩いていたとき、柏田は蜘蛛の巣に引っ掛かりました。ほとんど目に見えないながらも存在するという点で、蜘蛛の巣と地球の温暖化に通ずるものを感じ、インスピレーションを受けた作品を現地で滞在しながら制作しました。

柏田の手によりブドウ畑の葉をつたうさまざまな色の糸を用いて張り巡らされた「蜘蛛の巣」は、私たち人間の行いそのもののメタファーのようでもあります。温暖化という、目に見えない現象を引き起こしたり、はたまた影響を受けたりしながらも、地球とともに生きていく私たち人間の行いは、まるで空(くう)をたぐるようなものかもしれません。柏田の作品は、生命の強さと儚さ、自然の多様性と希少性、そして人間の領分の有限と無限をひもとき、ひもづけていくかのようです。

©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2024

©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2024

©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2024

©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2024

©︎ Tetsuo Kashiwada

©︎ Tetsuo Kashiwada

©︎ Tetsuo Kashiwada

©︎ Tetsuo Kashiwada

©︎ Tetsuo Kashiwada

©︎ Tetsuo Kashiwada

artist アーティスト

Tetsuo Kashiwada 柏田テツヲ

柏田テツヲ 1988年生まれ。旅をしながら自然や人に出会い、そこで感じた疑問や違和感に目を向ける。自然と人間の関係性、共存と分断そして環境問題をテーマに作品を制作している。主な受賞歴に「YPF PHOTO AWARDS 2022 最優秀賞」、「JAPAN PHOTO AWARD」(2021)、第43回写真新世紀 佳作(2020)などがある。主な展示に「屋久国際写真祭」(2022)、「OFF GRID Indipendent Photo Festival Wien」(2022)、 Rotterdam Photo(2024)、PhMuseum Days 2023などがある。 KYOTOGRAPHIE インターナショナルポートフォリオレビューの参加者より受賞者が選ばれる「Ruinart Japan Award 2023」を受賞し、 2023年の秋にフランスを訪れルイナールのアート・レジデンシー・プログラムに参加した。

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