Kikuji Kawada 川田喜久治
見えない地図
Supported by SIGMA
キュレーター:高橋 朗 (PGI)
セノグラファー:おおうち おさむ (nano/nano graphics)
川田喜久治は、広島と長崎への原子爆弾の投下から20年後にあたる1965年に、敗戦という歴史の記憶を記号化するメタファーに満ちた作品『地図』を発表。このデビュー作はセンセーショナルな驚きとともに、自身の初期のスタイルを決定的なものにしました。以来現在に至るまで、常に予兆に満ちた硬質で新たなイメージで私たちの知覚を刺激し続けています。
本展では、戦後を象徴する「地図」、戦後から昭和の終わりを見届け、世紀末までを写す「ラスト・コスモロジー」、高度成長期に始まり、近年新たに同タイトルで取り組んでいる「ロス・カプリチョス」の3タイトルを一堂にご覧いただきます。この3作品はこれまでそれぞれ発表の機会を得ていますが、ここに寄り添う65年という長い時間がひとつの場所を構成するのは初めてとなります。
自身の感覚の中に時代の論理を見る川田の極めて個人的な視座が捉えた時間と世界は、如何にして観る者の世界にシンクロしていくのでしょうか。
「Source」には、起源やオリジンといった名詞のほかに、「入手する」という動詞の意味があるそうです。レイト・スタイルにおいて「見えない地図」を手に入れた写真家は、刻一刻と変化する現代の張り詰めたカタルシスを写し、写真というメディウムと、時代と場所を自在に行き来きし、「この時、この場所」を俯瞰しようとします。
バーチャルツアー
アーティスト
Kikuji Kawada 川田喜久治
1933年茨城県生まれ。 1955年、新潮社に入社。1959年に新潮社を退社しフリーランスとなる。奈良原一高、東松照明、細江英公、佐藤明、丹野章らと共に写真エージェンシー「VIVO」(1959-61年)を設立。敗戦という歴史の記憶を記号化するメタファーに満ちた作品「地図」を1965年に発表し、以来現在に至るまで、常に予兆に満ちた硬質で新しいイメージを表現し続けている。自身の作品を「時代の中の特徴的なシーンと自分との関係をとらえて表現し、その時の可能な形でまとめ上げ、その積み重ねから一つのスタイルが生まれてくる」と語る。近年はインスタグラムにて写真への思考を巡らせながら、日々作品をアップし続けている。