James Mollison ジェームス・モリソン
子どもたちの眠る場所
Supported by Fujifilm
セノグラファー:小西啓睦 (miso)
ジェームス・モリソンの幼少期のベッドルームは、イギリスの実家の屋根裏部屋にある小さな部屋で、成長するにつれてそのときどきの好きなものが飾られていました。アクションマンのフィギュア、バットマンの車、マムジーとディドル・ダッシュという2匹のネズミのために木製の果物箱で多層階の遊び場を作ったものから、デュラン・デュランやマドンナが掲載された『スマッシュ・ヒッツ』誌のページ、軍隊のポスター、サーファーのポスター、ジミ・ヘンドリックスやザ・ローリング・ストーンズ、そして最後はレイヴパーティーのポスターまで。ベッドルームは彼にとって自分だけの王国でした。
それから何年も時が経ち、子どもの権利に関わる仕事を依頼されたモリソンは、自分の幼少期の部屋、ベッドルームについて考えました。子ども時代に寝室がいかに重要であったか、そしてその部屋がいかに自分の持っているものや自分という存在を投影していたか。そこで彼は、今日の子どもたちに影響を及ぼしている複雑な状況や社会問題を考える方法として、さまざまな境遇にある子どもたちの寝室に目を向けることを思いつきました。彼は当初、このプロジェクトを『ベッドルーム』と名付けましたが、やがて、彼自身が経験した『ベッドルーム』が、多くの子どもたちには当てはまらないことに気がつきます。世界中の何百万という家族がひとつの部屋で一緒に寝ていたり、何百万という子どもたちが自分の部屋と呼べるような場所ではなく、むしろ簡易的な空間で寝ていたりすることを知ります。彼は、自分が眠り、成長するための自分だけの王国を持っていたことが、いかに特権的であったかを理解するようになりました。
モリソンは現在、5大陸40カ国で「Where Children Sleep(子どもたちの眠る場所)」のプロジェクトのために子どもたちを撮影しています。一人ひとり異なる境遇に生まれた子どもを紹介するこのプロジェクトは、貧困、富、気候変動、銃による暴力、不平等、教育、ジェンダー、難民危機など、現代の複雑な問題について考えるための手段になるのではないでしょうか。
バーチャルツアー
アーティスト
James Mollison ジェームス・モリソン
ケニア生まれ、イギリス育ち。ニューポート・スクール・オブ・アートで映画と写真を学んだ後、イタリアに渡り、ベネトンのクリエイティブ・ラボ、ファブリカで働く。現在ヴェネツィア在住。社会的・文化的テーマに独自のコンセプトを適用した作品を発表している。KYOTOGRAPHIE 2024で発表する「Where Children Sleep」は世界中の子供たちとその寝室をテーマにした進行中のプロジェクトで、子供たちの生活の複雑な現実を探求している。2010年に第1巻、2023年に第2巻を出版。これまで刊行した写真集に、『Playground』(子どもたちが遊ぶ校庭の風景写真)、『The Disciples』(コンサートの前後に撮影された音楽ファンのパノラマポートレート)、『The Memory of Pablo Escobar』(「史上最も裕福で最も凶暴なギャング」の驚くべき物語を、モリソンが集めた何百枚もの写真で語る)、『James and Other Apes』(類人猿の「パスポート」写真)などがある。これらのプロジェクトは、世界中の美術館やギャラリーで広く展示されている。