Iranian citizen and photographers イランの市民と写真家たち
あなたは死なない──もうひとつのイラン蜂起の物語──
In collaboration with
キュレーター:マリー・スマラ、ハザル・ゴルシリ
展示デザイン:辨野 翔太郎、イアニス コンブ
クルド名で「ジーナ」と呼ばれるイラン人女性、マフサ・アミニ、2022年9月当時22歳。彼女はラジオの司会者になることを夢見て、故郷のイラン西部クルディスタンのサッケズで衣料品店を開いたばかりでした。同年9月13日、イランの首都テヘランを家族で訪ねていた彼女は、「非イスラム的な外見」という理由で警察に逮捕されました。9月16日、彼女は拘留中に受けた暴行が原因で死亡。彼女の死は、1979年に樹立されたイラン・イスラム共和国の歴史上、最も大規模な抗議の渦を巻き起こしました。葬儀の日、彼女の墓には「親愛なるジーナ、あなたは死なない、あなたの名前はシンボルになる」という叔父の言葉が書かれた質素なコンクリートブロックが置かれます。この言葉とその予言的な強靭さが、彼女の死をイラン社会全体への抗議運動へと導きました。当初は革命もイラン・イラク戦争(1980ー1988年)も経験していない若者たちが主導したこの運動は、現在では他の年齢層や社会のほとんどすべての階層に男女を問わず影響を及ぼしています。その目的は、当局の命令に背き「生きることを取り戻す」こと。人々はスローガンに「女性、生命、自由!」と掲げ、声高に叫びました。イラン当局が公式の情報チャンネルでこの運動の画像を拡散したくなかったという背景もあり、本展の写真や動画(ほとんどがソーシャルメディアからの引用)を撮影したのは、その多くが匿名を希望するイラン市民です。ル・モンド紙と2人のイラン人同僚、パヤム・エルハミとファルザド・セイフィカランの尽力により、本展の写真や動画をオンライン上にて照合し撮影された日付と場所を確認することができました。また匿名を含むイラン人フォトグラファーの作品も今回の展示のために集められました。「あなたは死なない」は、イランの民衆の勇気に捧げる頌歌であり、イランの歴史における重要なエピソードを不朽のものとするためのマニフェストなのです。

©︎ Kenryou Gu-KYOTOGRAPHIE 2024

©︎ Kenryou Gu-KYOTOGRAPHIE 2024

テヘランのケシャヴァルズ大通りにあるモスクの前の若い女性。抗議行動が始まってからのイランの女性の勇気を象徴するこの写真は2023年世界報道写真展アジア部門入賞。2022年12月27日撮影。撮影者Ahmadreza Halabisaz。

ソハナクにあるアザド大学芸術学部の学生たちが、政権による殺人に対する怒りを示すパフォーマンスを行う。テヘラン、2022年10月10日。匿名の撮影者。

東クルディスタンのマフサ・アミニの故郷であるサッケズで、マフサ・アミニの死後40日を追悼するため、何千人もの人々がアイチ墓地へ向かう中、ヒジャブをかぶらない若い女性が車の上に立っている。イスラム教の伝統では、この日を魂があの世に行く日、喪が明ける日として祝う。2022年10月26日、東クルディスタン、サッケズ。匿名の撮影者。
キュレーター
Ghazal Golshiri ハザル・ゴルシリ
1981年テヘラン生まれ。2011年よりル・モンド紙国際部記者、主に中東を担当。
Marie Sumalla マリー・スマラ
1980年ペルピニャン生まれ。2011年よりル・モンド紙フォト・エディター。