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Yuhki Touyama 頭山ゆう紀

A dialogue between Ishiuchi Miyako
and Yuhki Touyama

「透視する窓辺」

With the support of KERING’S WOMEN IN MOTION

そのものに宿る記憶と時間をフィルムにおさめ、作品を発表してきた国際的な写真家、石内都が本展に選んだ若手女性写真家は頭山ゆう紀。本展では、二人の写真家の作品が「身近な女性の死」という共通点のもと同じ空間で重なり合います。

石内の〈Mother’s〉は、2000年に亡くなった自身の母親の遺品と向き合ったシリーズで、これまでに世界中で展示されてきました。作中では個人的なテーマを扱っていますが、石内が展示を繰り返し数多くの人の目に触れることで、モチーフは「自分の母」という存在から誰のものでもない「母親」、そして「女性」へと昇華していきました。

頭山は、2年前のコロナ禍に亡くした祖母の介護中に撮影した新作と、2008年のシリーズ〈境界線13〉より家族がいる風景の作品を選びました。しかし、そこには他の家族は写っていても祖母と昨年急逝した母の姿は写っていません。頭山は新作では祖母自身を撮影するのではなく、病気で外出できなくなった祖母の立場に立ってシャッターを押すことに決め、相手に寄り添おうとしたのです。

二人の写真家は、写真を通して今は亡き相手とコミュニケーションをとるようにしました。頭山はまた、石内の〈Mother‘s〉と並んだ空間に展示することで、母親との新しい関係が築けると考えています。 作品が写す「個」は、展示によって写真の対象そのものから解放されることで、そのモチーフは普遍性を持ち、さらに社会性の領域へと境界線を超えていくのです。

石内は長きにわたり写真家として写真の歴史をつくってきました。世代の異なる頭山との今回の対話で、写真史に新たな1ページを刻むことになるでしょう。


本展は、ケリングの「ウーマン・イン・モーション」の支援により制作される、世代の違う女性写真家2名による対話的なエキシビションとなる。「ウーマン・イン・モーション」は、アートとカルチャーの分野で活躍する女性に光を当てることを目的として2015年に発足し、以降様々な芸術分野における女性の地位や認識について理解を深め、変化を促すためのプラットフォームになっている。

展示風景  ©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

展示風景 ©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

シリーズ〈境界線13〉より © Yuhki Touyama

シリーズ〈境界線13〉より © Yuhki Touyama

© Yuhki Touyama

© Yuhki Touyama

© Yuhki Touyama

© Yuhki Touyama

Virtual Tour バーチャルツアー

artist アーティスト

Yuhki Touyama 頭山ゆう紀

1983年千葉県生まれ。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。生と死、時間や気配など目に見えないものを写真に捉える。自室の暗室でプリント作業をし、時間をかけて写真と向き合うことで時間の束や空気の粒子を立体的に表現する。主な出版物に『境界線13』(赤々舎 2008)、『さすらい』(abp 2008)、『THE HINOKI Yuhki Touyama 2016−2017』(THE HINOKI 2017)、『超国家主義−煩悶する青年とナショナリズム』(中島岳志 著、頭山ゆう紀 写真/筑摩書房 2018)がある。

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