05

Ishiuchi Miyako 石内 都

A dialogue between Ishiuchi Miyako
and Yuhki Touyama

「透視する窓辺」

With the support of KERING’S WOMEN IN MOTION

そのものに宿る記憶と時間をフィルムにおさめ、作品を発表してきた国際的な写真家、石内都が本展に選んだ若手女性写真家は頭山ゆう紀。本展では、二人の写真家の作品が「身近な女性の死」という共通点のもと同じ空間で重なり合います。

石内の〈Mother’s〉は、2000年に亡くなった自身の母親の遺品と向き合ったシリーズで、これまでに世界中で展示されてきました。作中では個人的なテーマを扱っていますが、石内が展示を繰り返し数多くの人の目に触れることで、モチーフは「自分の母」という存在から誰のものでもない「母親」、そして「女性」へと昇華していきました。

頭山は、2年前のコロナ禍に亡くした祖母の介護中に撮影した新作と、2008年のシリーズ〈境界線13〉より家族がいる風景の作品を選びました。しかし、そこには他の家族は写っていても祖母と昨年急逝した母の姿は写っていません。頭山は新作では祖母自身を撮影するのではなく、病気で外出できなくなった祖母の立場に立ってシャッターを押すことに決め、相手に寄り添おうとしたのです。

二人の写真家は、写真を通して今は亡き相手とコミュニケーションをとるようにしました。頭山はまた、石内の〈Mother‘s〉と並んだ空間に展示することで、母親との新しい関係が築けると考えています。 作品が写す「個」は、展示によって写真の対象そのものから解放されることで、そのモチーフは普遍性を持ち、さらに社会性の領域へと境界線を超えていくのです。

石内は長きにわたり写真家として写真の歴史をつくってきました。世代の異なる頭山との今回の対話で、写真史に新たな1ページを刻むことになるでしょう。


本展は、ケリングの「ウーマン・イン・モーション」の支援により制作される、世代の違う女性写真家2名による対話的なエキシビションとなる。「ウーマン・イン・モーション」は、アートとカルチャーの分野で活躍する女性に光を当てることを目的として2015年に発足し、以降様々な芸術分野における女性の地位や認識について理解を深め、変化を促すためのプラットフォームになっている。

展示風景  ©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

展示風景 ©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2023

© Ishiuchi Miyako, <span class="u-italic400">Mother’s #39</span>, Courtesy of The Third Gallery Aya

© Ishiuchi Miyako, Mother’s #39, Courtesy of The Third Gallery Aya

© Ishiuchi Miyako, <span class="u-italic400">Mother’s #5</span>, Courtesy of The Third Gallery Aya

© Ishiuchi Miyako, Mother’s #5, Courtesy of The Third Gallery Aya

© Ishiuchi Miyako, <span class="u-italic400">Mother’s #57</span>, Courtesy of The Third Gallery Aya

© Ishiuchi Miyako, Mother’s #57, Courtesy of The Third Gallery Aya

Virtual Tour バーチャルツアー

artist アーティスト

Ishiuchi Miyako 石内 都

群馬県桐生市生まれ。神奈川県横須賀市で育つ。1979年に〈Apartment〉で第4回木村伊兵衛写真賞を受賞。2005年、母親の遺品を撮影した〈Mother’s〉で第51回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表作家に選出される。2007年より現在まで続けられる被爆者の遺品を撮影した〈ひろしま〉も国際的に評価されている。2013年紫綬褒章受章。2014年には「写真界のノーベル賞」と呼ばれるハッセルブラッド国際写真賞を受賞。近年の主な展覧会・出版物に、個展「Postwar Shadows」(J・ポール・ゲッティ美術館 ロサンゼルス 2015)、写真集『フリーダ 愛と痛み』(岩波書店 2016)、個展「肌理と写真」(横浜美術館 2017)、個展「石内 都」(Each Modern 2022 台湾)、個展「Ishiuchi Miyako」(Stills 2022 エディンバラ)、「六本木クロッシング」(森美術館 2022)などがある。作品は、東京国立近代美術館、東京都写真美術館、横浜美術館、ニューヨーク近代美術館、J・ポール・ゲッティ美術館、テート・モダンなどに収蔵されている。

Back