── 私たち日本人には、イギリスのブラックカルチャーが歴史的に、どのように受け入れられ、発展していったのか、なかなか想像がしづらい部分もあります。今回展示されるGrowing Up Black シリーズについてお話を伺いたいのですが、この写真からどのようにブラックカルチャーを解釈すれば良いでしょうか?
ロンドン東部のハックニーという名の地区で私は育ちました。そこは黒人が多く住む地区でした。その頃、ロンドン市内のハックニーとブリクストンという地区に多くの黒人が住んでいました。1960年末から1970年代にかけてでしょうか、私がまだ幼かった頃、私たちは「有色人種」と呼ばれていました。それが、少し大きくなった頃から「黒人」と呼ばれるようになったのです。この作品のタイトルGrowing Up Black はそのような事実に基づいています。私たちのようなコミュニティがイギリスでどのように生活していたのかを、私はこの作品を通して伝えたいと思っています。私自身は移民2世です。私たちは親世代が白人の奴隷のように扱われてきたのを目の当たりにしていたので、学校を卒業後はすぐに働きに出ました。親世代がしていたような生活をしたくなかったからです。でも、私は学校を卒業後、アーティストになりたかったので工場に働きには行きませんでした。その頃、イギリスには黒人のアーティストがほとんどいなかったので、私にとって、この決断そのものが非常にチャレンジングなことでした。
1960年生まれ、イギリス出身。9歳のときに写真をはじめ、11歳の時に英国の主要日刊大衆紙『デイリー・ミラー』にて作品が掲載される。レンズを通じ非凡な人物たちの真髄に迫り作品を発表している。1974年には、ボブ・マーリーの初の全英ツアーに同行。音楽シーンと密接に関わり、ボブ・マーリー、セックス・ピストルズ、マリアンヌ・フェイスフルのアルバムのカバーなど、人々の印象に深く残るアイコニックな写真作品を多数発表している。また、イギリス・サウスオールのシーク教徒のコミュニティの本質をとらえ撮影した作品群がイギリス政府のイングリッシュ・ヘリテッジに所蔵された。主な刊行物に、ボブ・マーリー写真集『A Rebel Life』、セックス・ピストルズ写真集『The Bollocks』などがある。モリスの作品は、今日美術館(北京)、ラフォーレミュジアム(東京)、アルル国際写真祭(フランス)、The Photographers' Gallery(ロンドン)、The Institute of Contemporary Arts(ロンドン)、テート・ブリテン(ロンドン)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ロックの殿堂(アメリカ クリーブランド)など世界各国で展示されている。主な所蔵先に、テート・ブリテン、ナショナル・ポートレート・ギャラリー(ロンドン)、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)などがある。
キュレーター
Isabelle Chalard イザベル・シャラール
ロンドン、ロサンゼルスを拠点に活動しているインデペンデント・キュレーター。写真と現代中国美術を主軸とした独自のキュレーション活動を行っている。少数精鋭のアーティストや写真家とコラボレーションし、洋の東西に橋を架けている。イギリスの名門芸術大学と協働し交換留学プログラム(Red Mansion Art賞)を設立、地域特化のプロジェクト(アイ・ウェイ・ウェイ、ヤン・フードン、ツァオ・フェイらと共同でサーペンタイン・ギャラリーにてChina Power Station 展の開催など)、レジデンシーや数多の国際的な芸術展での展示(北京の今日美術館、フランスのアルル国際写真祭、第10回イスタンブール・ビエンナーレ、東京のラフォーレミュージアム等)など、様々な芸術活動を手がけている。