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KG+ select | 2020 Grand prix

KG+SELECT2020 Grand Prix

KG+SELECTの10展覧会から審査員によってグランプリが一組選ばれ、
2021年のKYOTOGRAPHIEのオフィシャルプログラムのひとつとして展覧会が開催されます。
副賞としてSIGMA FPがシグマより贈られます。

グランプリ
Beneath the Scar

Yingfei Liang| 梁莹菲(リャン・インフェイ)

1990年、中国広州市生まれ。2015年より、財新メディアにてフォトジャーナリストとして活動。
2018年より、マグナム財団のプログラムに参加。中国を拠点に活動。
469153426.wixsite.com/yingfeiphoto



© Yingfei Liang

作家は、友人が性暴力の被害を受け、SNSに事実を投稿したことをきっかけに、被害を受けた女性たちの心理に目を向けた。これらの性的暴行の被害者の心的外傷の記憶、彼女らの生活と仕事への影響、これらの経験に対する作家の個人的な共鳴を記録する。
展示は3部構成である。友人の私生活の記録と、彼女の告発を取り上げたメディア報道などを組み合わせたパート1から始まり、被害者へのインタビューから記憶を再構築し提示するパート2、そして被害者の体験を第三者が声に出して読む様子を捉えたビデオがパート3として続く。


審査委員会による講評

KG+SELECTのグランプリを選出した審査員らによる講評です。

今年も2019年に続きKG+Selectの審査員をさせていただいた。今年は世界的なパンデミックの影響でKyotographieとともにKG+も開催が春から秋に延期された。例年通り淳風小学校では選考に残った作家の作品が個展形式で展示されたが会場の設置はリモート指示で行われたと聞いた。
 まさに今、突然展開不能となった過去のシステムが残骸のように堆積し高い壁となって私たちの行く手を塞いでいる。ほぼ全ての人がこの状況から脱却するために奮闘し知恵を振り絞ってひたすら対処する日々に追われている。そのような危機的状況の中でKG+が開催されたことは不幸中の幸いだった。展覧会は例年通り各々の作家の個性を引き出すための展示が成されていた。作品を展示できる幸運な機会を得られた作家達と主催者や関係者の方々の並々ならぬ苦労と努力に称賛を送りたい。
 KG+はKyotographieと同じく政府や自治体から金銭的な支援のない民間主体のアートフェスティバルである。運営は毎年苦難の連続でもだからこそ守られる表現の自由がある。まだ少なからず表現の自由が許されている日本で、国際性があり、しかも主要テーマを社会問題においている、若い作家の発掘と支援を目的とした写真賞が民間主体で継続開催されていることは大変重要であり、微小ながら私たちも毎年協力を惜しまず応援している。一般的には理解され難い内容の作品も少なくないがKyotographieという今や世界的な知名度を持つ国際写真祭との連携により、普段は足を運ばない人たちに対しても広く関心を持たれる可能性を持ち、幅広い写真表現の世界観を提起することに成功している。
 KG+という「場」は国境を越えそれぞれが自分の声を持ち寄ることが許された場所だと思う。これからの時代は大賞をとることだけが目的の賞レースよりむしろ完璧ではないものの「小さな声」が集まれる場所が必要になってくると思う。この賞の存在が広く世界に必要になる未来が既にきているのではないか。皆が声を持ち寄り、気づき合い、救われ合う世界が写真から広がることを切に願っている。

榮榮&映里

性被害という閉ざされたすでに起こってしまった事件や見えない傷をいかに視覚化して社会と共有するのか、被害者の女性たちとやりとりをしていく中で、どの方法で最もそれが可能になるか、現時点で考え抜いた結果を私たちに見せてくれたのがYingfei Liang(必要であればカタカナに変換してください)の作品だ。作家は常日頃は写真記者として中国のあらゆる日常に起きる社会事象を匿名化して伝えることに慣れているはずだが、この作品には同じ女性として一人の表現者として、その事実を「個」に迫り比喩的に再構築するなどして作品として見せている、世界中で性被害当事者が名乗りをあげることが奨励される動きも出てきた、被害を受けた女性がSNSで事実を投稿したということも拠り所のない最後の手段が現代的であり、法やメディアの力に頼らず個人が警鐘の発端となれる時代ならではと感じる。一方で本人たちを目の前にしているのに、何故か共感が出来ないこともあるのは現実だ。自分と置き換えてその気持ちになることや痛みを理解するには、個々に想像させる余地を与えることが必要なのだと彼女はいくつかの表現方法にその思いを託した。
でも、彼女ならまだ何か出来ることがあるんじゃないか、そして彼女ならそれをしてくれるだろうという気がしている。それを来年の個展で見れることに期待している。

後藤由美

Beneath the Scar 会場風景