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KG+ select | 2019 Grand prix

KG+ SELECT | 2019 Grand prix

グランプリ
弁当 is Ready.|Box Lunch is Ready

福島 あつし|Atsushi Fukushima

1981年神奈川県生まれ、神奈川を拠点に活動
www.happyislandphotos.com



作家インタビュ−

© Atsushi Fukushima

作家は高齢者専用の弁当屋の配達員をしている。その配達先にカメラを持ち込むことで、「生と死」「高齢化社会」といったテーマを浮かび上がらせる。作家は老人たちを撮影するときのことを「僕は自分の網膜にその(老人の)眼が焼きついてしまいそうになるのが、ただただ怖かった。30分の1秒というあまりにも呆気ないシャッタースピードで、とにかくフィルムに閉じ込めて楽になりたかった」と語る。そうして撮影されたこれらの写真は「撮った」のでも、「撮らされた」のでもないのだという。そこには私たちが普段見ることも想像することもない生活が、動かし難い事実として「ある」ということが突きつけられている。


審査委員会による講評

KG+SELECTのグランプリを選出した審査員らによる講評です。

 KG+SELECTはその展覧会の質の高さと参加するアーティストの多様性によって大きな成功をおさめ、日本やアジアのみならず世界規模での若手写真家たちの活躍の証言の場として認められつつある。旧小学校の教室という未知なるスペースが、アーティスト達に様々なインスピレーションを与え、自由に作品空間を創造するのを可能にしている。そのセレクションも非常に興味深い。日本だけでなくアジアの若手写真家も参加しており、彼らの多くが非常に個人的な領域に属するテーマを扱っていることも衝撃的である。彼らの関心は、老い、同性愛、カップル、双子などに向けられ、これらのテーマがアーティストたちの身近な状況からアプローチされているのだ。アルツハイマーに冒された祖母、自伝的物語、近しい友達など、取り上げられた被写体が何であれ、ほぼ全ての写真家が一般性の高い社会的な、そして極めて政治的な問題を扱うために、もっとも身近なものを対象として選んでいる。私たちの世界との関わり、時間や他者と関係に再認識を迫るのは、往々にして隠された暴力のイメージや優れた詩情なのだ。

 審査員の全員一致で認められた福島あつしの作品は、現代における写真の重要な可能性を示している ー 私たちの共同体において重要であるにも関わらず蔑ろにされている生活様式に焦点をあて、新たな認識を喚起すること。高齢者向け弁当配達人として働く彼は、自宅に閉じこもった老人たちの家に通い、彼らにレンズを向けることによって、これらの人々の生活について豊かな知性と感受性をもって私たちに語りかける。こうして彼は節度を保ちながらも決然とした身振りで、表現活動は人々の生活を擁護することができるし、またするべきであると示しているのだ。

 本写真祭は、ヴァリエーションに富んだオフィシャル・セレクションと同時に、KG+という日本の写真界の新たな地平を開く真の実験室を備えている。この前衛と権威の絶妙なバランスが、このフェスティバルの大きな魅力であることは言うまでもないだろう。

弁当 is Ready. 会場風景